2018 年9 月26 日

台風20,21号連続して上陸

秋雨前線が停滞

先月号(本コラムNo.65)に書いたように、8月中旬までは全国的に記録的な高温になりましたが、台風20号が通過した8月の終わりには、夏の太平洋高気圧に代わり、秋の大陸の高気圧が張り出し、秋雨前線(停滞前線)が発生し、厳しい暑さも一段落しました。

その後、北日本付近にあった秋雨前線は南下し、台風21号が通過した9月上旬以降には、日本南岸付近に停滞し、はっきりしない天気が続いています。このため、9月に入ってからは最高気温35℃以上の猛暑日は観測されず、気温は平年並みになりました。

平成30年8月26日9時

平成30年9月6日6時

地上天気図
気象庁Webサイトより

 

 

台風が同じコースで上陸

台風20号が8月23日に、9月4日には台風21号が相次いで同じコースをとり、強い勢力のまま四国に上陸しました。

台風20号は、8月23日21時頃に中心気圧965hPa、最大風速40m/sの強い勢力で徳島県南部に上陸、その後24日0時頃に姫路市付近に再上陸し、2時過ぎには山陰沖の日本海へ抜けました。和歌山県友ヶ島で最大瞬間風速52.3m/sを観測するなど、四国から近畿地方で暴風が吹き、幸いにも死者はゼロでしたが、近畿地方を中心に27万戸以上の停電が発生しました。

一方、台風21号は9月4日12時頃に中心気圧950hPa、最大風速45m/sの非常に強い勢力で台風20号と同じく徳島県南部に上陸、その後時速65kmで北北東に進み、14時頃に神戸市付近に再上陸、15時には若狭湾から日本海へと早いスピードで抜けました。

非常に強い勢力での上陸は23年ぶりになり、大阪府の関空島では最大瞬間風速58.1m/s、敦賀で47.9m/sを観測するなど、近畿地方から北陸地方で暴風が吹き、全国75の観測地点で過去の最大瞬間風速の記録を更新しました。

これにより、死者13名、近畿地方から中部、北陸地方にかけて最大で220万戸で停電が発生、さらには大阪港で過去最高の潮位を観測し、関西国際空港が浸水するなど、高潮による大きな被害も発生しました。

 

台風20号では、岐阜県内は暴風域に入る確率が低いと予想されたため、暴風警報が発表されず、岐阜では最大瞬間風速24.7m/sを観測しました。なお、岐阜への最接近は8月24日3時頃の約180㎞でした。

一方、台風21号は台風20号より暴風域が広く、進路も東寄りに進んだため、県内は暴風域に入る確率が高く、9月4日6時に暴風警報が発表されました。

4日の15時頃には岐阜に120kmまで接近し、大垣で最大瞬間風速34.8m/sを観測したのをはじめ、県下13地点で過去の記録を更新し、岐阜では過去4位に相当する39.7m/s、高山でも3位に相当する33.3m/sを観測しました。このため県内では最大約20万戸で停電が発生しました。

台風の進行速度と風速

下の表は、台風20号、21号における四国、近畿、東海地方の主要な観測地点の最大瞬間風速と台風中心までの距離を表しています。おおむね二つの台風とも中心に近い地点ほど風速は強くなっています。

しかし、台風20号における中心までの距離が同程度の大阪と敦賀の最大瞬間風速を比較してみると、海岸近くにある敦賀の方がより強い風が吹いています。これは、風速は観測地点周辺の地形状況に大きく左右されるためです。岐阜と高山を比較しても平野部に位置する岐阜の方が強い風が吹いています。

また、台風21号における中心までの距離が同程度の大阪、敦賀、高松、姫路を比較してみると、進行方向右側(危険半円)に位置する大阪、敦賀の風速は、左側(可航半円)に位置する高松、姫路の約2倍を観測しました。

これは、本コラムNo.19で報告したように、台風の右側では台風の進行速度が加わるため風速が強くなり、左側では進行速度が減ぜられて風速が弱くなるからです。特に、台風21号では進行速度が55㎞以上と非常に早かったため、より顕著に表れました。

進行方向の右側の風速は、台風の進行速度が+され、左側は-される。

台風の進行速度 時速55km→秒速15.2m

暴風域内の

右側の風速 25m/s+15.2m/s=40.2m/s

左側の風速 25m/s‐15.2m/S=9.8m/s

「暑さ寒さも彼岸まで」との言葉がありますが、岐阜の9月19日の最低気温は17.9℃、高山では20日に12.5℃と、ともに10月上旬並みの気温になり、少し秋めいてきました。この時期の代表的な花の彼岸花の色は、赤、白、黄色などいろいろありますが、先日、道路脇の小さなスペースに初めて薄いピンクの彼岸花を見つけ、思わず写真をとりました。

今月の写真

薄いピンクの彼岸花
(富加町地内で 9月20日撮影)

一口コラム

高潮とは

台風に伴う強風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、海岸付近の海面が上昇します(吹き寄せ効果)。吹き寄せによる海面上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。特にV字形の湾の場合は海面上昇が大きくなります(津波でも同じ現象が発生します)。

また、台風が接近し気圧が低くなると、今まで押さえていた海面への圧力が小さくなり海面が上昇します(吸い上げ効果)。気圧が1hPa低いと海面は約1cm上昇するといわれています。

台風21号による大阪の最低気圧は、9月4日14時962.7hPa、最大瞬間風速は47.4m/sでした。9月4日の最大潮位偏差277㎝(平常より海水面が上昇)を観測しましたが、気圧低下により約50cm、吹き寄せにより約230cmの海面の上昇があったと推察されます。

なお、潮位偏差とは、実際の潮位と天文潮位(満潮・干潮のように、月や太陽の起潮力によって起こる潮位)との差です。

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