2020 年3 月27 日

温暖化が依然進行

気温は依然高め

コラム(No.82)で報告したように、2019年の日本の年平均気温は平年に比べ0.92℃高くなり、観測史上1位の記録を更新、岐阜でも過去最高気温を記録しました。

こうした状況は、年明け以降も続き、今年の冬(12月~2月)は、冬型の気圧配置が続かず全国的に寒気の流入が弱く、日本の平均気温は平年に比べ1.66℃高く、特に東日本、西日本では2.0~2.2℃高くなりました。

全国153の観測所のうち約7割にあたる111地点で、冬季の最高気温を記録しました。

なお、世界の気温は高めに推移し、2019年の年平均気温、冬季の気温ともに観測史上2位の高温になりました。

そのため、この冬の降雪量は全国的にかなり少なく、北日本(北海道、東北)の日本海側で平年比44%、東日本(関東~中部)の日本海側で7%と、観測史上最少の記録を更新しました。

県内では、岐阜の平均気温は平年より2.3℃高い7.7℃(高知並み)、高山でも平年より2.6℃高い2.3℃となり、ともに観測史上1位を記録しました。降雪深は岐阜で平年の2%の1㎝、高山では平年の12%の48㎝となり、最少の記録を更新しました。

地球温暖化の現状

2013年~2014年に出されたIPCC第5次評価報告書(以下「5次報告書」という)では、「気候システムの温暖化には疑う余地はない。気温、海水温、海水面水位、雪氷の減少などの観測事実が強化され温暖化していることが再確認された。今世紀末までの世界平均気温の変化は0.3~4.8℃、海面水位の上昇は0.26~0.82mの範囲に入る可能性が高い」とあり、1880年~2012年までの期間に世界の気温は0.85℃上昇しています。

2019年までの世界の年平均気温偏差(1981年~2010年までの平均(基準値)との差)を見ると、21世紀に入り、ほとんどの年が基準値を上回り、気温は一層上昇しています。

IPCCの報告書は5~6年おきに公表されていますが、下図に示すように5次報告書を取りまとめた2013年以降、より高温の年が頻発し、2021年に発表予定の第6次報告書は、一層厳しい内容になると予想されます。

地球温暖化の日本への影響

地球温暖化が進行すると、世界的に暑い日の増加、寒い日の減少、大雨の頻発、短時間強雨や降水量の増加、干ばつの増加、台風強度が増すことが考えられます。

5次報告書では、このままでは21世紀末には、世界の平均気温は2.6~4.8℃上昇、降水量は中緯度陸域(日本など)では、極端な降水がより強く、より頻繁に発生すると予測されています。

気象庁は2017年3月に公表した「地球温暖化予測情報第9巻」で、最も厳しいシナリオでの21世紀末の日本の気候を次のように予測しています。

①全国の年平均気温は4.5℃上昇、特に北日本の気温の上昇が大きく現れる

②年間降水量は、明らかな変化は見られないが、気温上昇による大気中の水蒸気量の増加に伴い、日降水量200㎜以上や1時間降水量50㎜以上の発生回数は、全国平均で2倍以上増加

③年間無降水日数は増加

④台風の発生数は減少するが、海面水温が上昇するため強度が増加し、強い勢力のまま日本に接近するものが増加

また、21世紀末の岐阜の気候は、年平均気温は約4℃上昇し種子島並みに、猛暑日は約40日、熱帯夜は約60日増加、1時間降水量50㎜以上の年間発生回数は2倍に、年間無降水日数は10日ほど増加すると予測されています。

こうした予測を裏付けるように、令和元年台風19号、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、平成30年の猛暑、平成29年7月九州北部豪雨、平成28年台風7号(初の北海道上陸)、平成27年7月関東・東北豪雨など、近年、今までにないような気象現象に見舞われ、甚大な被害が発生しています。

すでに地球温暖化の影響が現れており、今後ますますこうした災害の発生が危惧されます。

今月の写真

気象台は、平年より5日早い3月21日に岐阜市でのさくら(ソメイヨシノ)の開花を発表しましたが、日当たりの良い長良川河畔では、すでに満開を迎えようとしています。

さくらと言えば昔は入学式の時期でしたが、温暖化により現在では卒業式の花になろうとしています。

私も本コラムをもって卒業させていただきます。今まで7年間にわたり災害時の気象状況、気象情報の見方等を紹介してきました。

お天気コラムが少しでも皆様のお役に立てたのではないかと思っております。

ご愛読ありがとうございました。

さくらと岐阜城(撮影日3月23日)

一口コラム

IPCCとは

国連気候変動に関する政府間パネルのことで、人為起源による気候変化、影響、適応等に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地からの評価を目的に、1988年に国連環境計画と世界気象機関により設立された組織です。

各国から推薦された科学者が参加し、5~6年ごとにその間の気候変動に関する研究から得られた知見を評価し、評価報告書にまとめて報告しています。

なお、今までに1990年の第1次報告書から第5次報告書まで公表されています。

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