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自分のものさしを持つ 照明デザイナー 近田 玲子 先生以前「ルールとテクニック」という講演のテーマをもらい、照明デザイナーの立場で考えてみたことがあります。まず、照明デザインにおける「ルール」としては、配線工事、電気用品取り締まり法、JIS など、安全上の「規則」があります。そしてもうひとつ、ルールは英語でものさしという意味で良く使われているのですが、デザイナーとしてその必要性を再認識したのは、物をみる尺度としての「ルール=自分のものさし」です。照明デザイナーであれば、良い光、悪い光を出来るだけたくさん見る。見て、見つめて見極めて得たものが「自分にしかない光のものさし」となり、その後の照明デザインに生きてきます。 一方の照明デザインにおける「テクニック」では、「何を表現するか」という目的の考察が何より大事です。まず「何を表現するか」というデザイナーのまなざしを明確に示します。次に「形や色をどう表現するか」具体的なデザイン手法が登場してきます。 岐阜駅北口駅前広場のプロジェクトでは、照明デザインを進めるにあたってのデザイン「ルール」として念頭に置いたのは、省エネルギーに徹することでした。効率良く明るさを得る、保守点検をやりやすくする、ランプ交換回数をできるだけ少なくすることで、CO2削減を達成すると同時に完成時の美しさを持続出来るのですから。 デザインの「テクニック」として一番大事な、北口駅前広場の光で「何を表現するか」については、即座に「岐阜らしさ」を挙げましたが、実際にそれをどう表現するかには頭を悩ませました。照明設計・工事に10年近くの歳月がかかったこの広場では、岐阜市の駅前広場担当者も数年で交替するのが一般的です。そのような状況の中では、分かりやすいイメージであればあるほど、当初の設計意図が次の担当者に引き継がれていきやすいと考えました。 そこで、全国的に知られた「長良川」「岐阜蝶」を、デザイン手法に取り入れることにしました。具体的には、ペデストリアンデッキの手すりに長良川をイメージして青色のLEDを埋込んだり、蝶をイメージして広場の照明ポールの灯具の形をデザインし、加えて、光演出のテーマに、信長、匠、金華山、鵜飼、長良川、まつり、岐阜蝶の七つを選び、変化のある広場としました。完成後、夕方になると広場に集う親子連れや若者たちを見かけるようになり、岐阜ならではの光が若い世代に受け入れられことを実感しました。設計者冥利に尽きます。 |
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