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台風の消滅パターン

 

与那国島で風速81.1m/sを観測 ~国内4番目の記録~

  今月も引き続き台風の話題です。
  9月下旬から10月上旬にかけて、二つの台風が日本に接近しました。9月28日に先島諸島を通過した台風21号と、関東沖を北上し10月8日に北海道の南東沖で温帯低気圧になった台風23号です。

  台風21号 台風23号
最低気圧 925hPa 955hPa
最大風速 55m/s(猛烈) 30m/s
暴風域(25m/s以上)
最大半径
190km 670km
強風域(15m/s以上)
最大半径
500km(大型) 1,000km(超大型)
台風周辺の海面水温 沖縄以南
28℃以上
北緯30度以南27℃以上
北緯40度以北18度以下
消滅過程 熱帯低気圧 温帯低気圧

  台風21号は、大型(強風域半径500km以上)で、猛烈な強さ(最大風速55m/s以上)の台風になりました。これは、台風が通過した海域の海面水温が28℃以上あり、海水面から多量の水蒸気(エネルギー)を吸収したためです。9月28日の天気図に見られるように等圧線が込み合い、1,000hPaの等圧線(太い実線)の直径は、約500km強の比較的コンパクトな台風でした。

  気象衛星画像でも台風の眼がはっきりしているように、最盛期に与那国島近くを通過したため、国内で4番目に当たる最大瞬間風速81.1m/sを記録し、大きな被害がでました。その後、大陸に進み、衰弱して熱帯低気圧に変わりました。



地上天気図(台風21号)
9月28日15時
気象衛星画像(9月28日16時)
レーダー画像(9月28日16時)

  一方、日本の東方沖を北上した台風23号は、最大風速30m/sと強さは並みでしたが、15m/s以上の強風域は1,000km以上にも及ぶ、超大型の台風でした。一般的に台風は海面水温が26℃以下の海域では発達しません。
   しかし、台風23号は、海面水温が26℃以下の北緯30度より北に進んでも発達し続け、中心気圧が最も低かったのは、温帯低気圧に変わる直前の10月8日9時の955hPaでした。なお、3時間後の12時には温帯低気圧に変わり、気圧は954hPaになりました。

  気象衛星画像を見ると、雲の形は台風21号のような円形ではなく、中心付近や南東側には雲がないエリアがあり、温帯低気圧のような形をしています。これは、台風が持つ暖かく湿った空気が大陸から流入した寒気と混ざり、この温度差がエネルギー源になり(当コラム023参照)温帯低気圧のように台風が発達しました。



地上天気図(台風23号)
10月8日6時
気象衛星画像(10月8日6時)


台風が消滅するパターン

  台風が消滅する過程には、2種類あります。
 一つは、台風が上陸したり、海面水温の低いところにくると、海面からのエネルギー補給がなくなります。その結果、積乱雲が発達せず、中心気圧は上がって風速が弱くなり、風速が17.2m/s未満になると、台風ではなく熱帯低気圧と呼ぶようになります。ただし、性質は台風と同じです。台風21号がこのパターンです。

 もう一つは、温帯低気圧に変わって消滅する場合です。
  台風が北上すると、周囲には寒気(冷たい空気)が現れてきます。台風は周囲の空気を巻き込んでいるため、寒気が中心付近に流れこみます。寒気が中心付近に達すると、暖かく湿った空気で構成される熱帯低気圧ではなく、温帯低気圧の性質を持ち、台風は消滅します。
このことを「台風の温帯低気圧化」といい、台風23号がこのパターンです。

 10月8日6時の天気図のように、台風が北上すると、北側の寒気と南から吹き込む暖気との間に停滞前線が発生します。次に、台風を回る風により西から寒気が近づいて、台風の南側に寒冷前線が現れ、同じころ温暖前線も現れます(10月8日9時の天気図)。
   しかし、二つともまだ中心までは達していません。さらに、寒気が中心付近に近づくと、温暖前線と寒冷前線がつながるとともに中心まで達して、温帯低気圧化が完了します(10月8日12時の天気図)。

 


地上天気図(台風23号)
10月8日9時
地上天気図(温帯低気圧)
10月8日12時


  台風から熱帯低気圧になっても性質は台風と同じため、大雨への警戒が必要です。
また、温帯低気圧になっても強風域が拡大する場合もあり、強風への注意と、大雨への警戒が必要です。やはり、「台風は消滅しても台(腐っても鯛)」です。

 山ではすでに紅葉が始まり、まもなく里まで下りてきます。その前に、秋空のもとに咲く秋桜(コスモス)が素敵です。

  秋は、大陸からくる乾燥した高気圧におおわれ、さわやかな日が多くなり、最高の行楽の季節、深まる秋を楽しみたいものです。 

巻雲と秋桜
10月15日撮影(関市内)



【一口コラム】
最大瞬間風速の記録

  今年は、国内での最大瞬間風速上位10位までの中の2つを観測しました。 4位の与那国島での81.1m/s(9月28日)と、8位の石垣島での71.1m/s(8月23日)です。

  なお、1位は富士山91.0m/s、2位は宮古島85.3m/s、3位は室戸岬84.5m/s。世界では100m/sを超す風速を観測しています。