朝の冷え込みと気温の日較差
朝の冷え込みと気温の日較差
今年の10月は2度にわたる台風の上陸という、稀に見る現象に見舞われました。それ以降は秋らしい、穏やかな天候が続いたように思われます。
ここ最近、朝方の肌寒さに目が覚めるということはなかったでしょうか。
29日の朝は、寒気と放射冷却の影響により、関東以西の広い範囲で今季一番の冷え込みを記録しました。
今季初めて10℃を切った地域も数多くありました。岐阜県でも、この日の最低気温は7.4℃となり、多くの人が厚着をして出勤したと思います。
この時期は、特に気温の日較差が大きい時期でもあります。朝方は0℃~10℃だった地域も、15時にはほとんどが20℃前後まで上昇しています。厚着をして朝から作業をされていた方も、午後からはシャツ一枚なって汗を流すことになったのではないでしょうか。
10/29日の全国の気温分布(左:6:00 右:15:00)(アメダス)
季節の変わり目に体調を崩しやすい訳
季節の変わり目には体調を崩しやすいという言葉をよく耳にします。
自分自身深く考えたことはなかったですが、考えてみればなぜ季節の変わり目なのでしょうか?
身体の中には「恒常性(ホメオスタシス)」という機能が備わっています。
これは、身体の中を常に一定に保つ働きで、例えば暑い所に放置した鉄は熱くなり、寒い所に放置した鉄は冷たくなりますが、体温は暑い所でも寒い所でもほぼ一定に保たれているのはこの恒常性という機能が働いているからです。
暑ければ、身体を冷ますために、汗を出したり毛穴を広げたりし、寒ければ、震えを起こして熱を産生したり毛穴を閉じて冷えないよう工夫します。
このようにして体温を一定に保っているのです。
暑い所や寒い所にいるだけで身体が疲れてしまった経験が、皆さんにもあるかと思われます。
恒常性を働かせて体温を一定に保つためには、相当の負担が身体にかかります。
そして、恒常性を保とうと身体に起こる様々な反応は、全て自律神経で調整されています。
季節の変わり目は、気温だけでなく天候や湿度も安定していないことが多く、恒常性を保とうと自律神経は普段以上に稼働してします。
通常以上に体力を消費してしまうので、疲れやすかったり、免疫力が低下して様々な不調を起こします。
さて、気温の較差という事で私事になってしまいますが、学生時代に研究の一環でニュージーランドを初めて訪れた時のことを思い出します。
私が訪れたのは、北島のトンガリロ国立公園内にあるランギポデザートと呼ばれる沙漠地帯でした。
ランギポデザートの風景とルアペフ山(2,797m)
ここには「マウンド」と呼ばれる、草本や灌木類に被覆された微凸(びとつ)地形が無数に散在し、特異な景観を形成しています。
沙漠地内に散在するマウンド
ニュージーランドは、国土の大部分が年中安定して、温暖な西岸海洋性気候に区分されており、大変過ごしやすい国として知られています。
しかし、調査の対象地はそんなイメージとは遠くかけ離れた場所でした。
特に初滞在時は、沙漠地帯特有の大きな気温較差に体がついて行かず、体調を崩して大変な目に遭ったことを鮮明に記憶しています。
11月7日に立冬を迎え、暦の上では冬を迎えることになりました。ですが朝晩の冷え込みが多くなったとはいえ、まだそこまで厳しい寒さもなく、「冬」を実感している人はそういないと思います。
初霜が降りる頃を境に、「冬」になったことを意識し始める人が多いのではないでしょうか。
岐阜市は、11月の中旬が初霜の平年日となっていて、当然ながら厳しい寒さが予測されます。初霜が降りるまでに冬支度を完了させて、寒さの到来に備えておきたいですね。
ちなみに余談ですが、幻のお米と呼ばれ岐阜県内で栽培されている「ハツシモ」の由来でもあり、初霜が降りる頃に収穫されることからこの名がついたそうです。
気温の日較差が大きい今日この頃、いつもより多めに体を休ませて体調をしっかり管理していきましょう。
応用計測部 大村 勇太
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【一口コラム】
放射冷却
日中、太陽光が地表面に当たっている時間帯は、地表面は太陽放射を受けて温度が上昇します。逆に夜間は地表面から宇宙空間に向けての放射があり、地表面の温度は低下します。
この時大気中に雲が存在していれば、雲に含まれる水蒸気により放射の一部が反射されて地表面に戻ることにより、地表面の温度低下が妨げられます。
一方、大気中の水蒸気が少ないよく晴れた夜間には、地表からの放射はそのまま宇宙空間に放出されるため、地表付近の温度が低下しやすくなります。この状態を放射冷却と呼びます。
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