さくらは、前年の夏に翌年の春に咲く花のもととなる花芽を形成し、休眠状態に入ります。秋から冬にかけて5℃前後の低温に一定期間さらされると休眠状態からさめ、春先の気温の上昇とともに発育開花します。特に春先1月~開花までの気温が開花に大きく影響します。(さくらをはじめ色々な動植物について詳しいことをお知りになりたい方は、当社グループの「 自然学総合研究所」にお尋ねください)
今年の岐阜市でのソメイヨシノは、平年より5日早い3月21日に開花し、3月29日に満開を迎えました。今年は1月から2月末までの平均気温は平年に比べ0.5℃低かったことから、開花は平年並みもしくは遅いと予想されていました。しかし、3月の平均気温は逆に1.6℃高かったことから、平年より開花は5日、満開は6日早くなったと考えられます。高山市の気温も岐阜市と同様に、1月から2月末までの平均気温は平年に比べ低かったものの3月の平均気温は1.7℃高かったことから、高山市では平年の4月15日頃より速い13日に開花が予想されています。高山市では4月14~15日は「春の高山まつり」が開催され、同時にさくらの開花が予想されます。このように、飛騨地方の各地は厳しい冬が終わり心待ちにしていた春をさくらの開花とともに一気に迎えます。
さくらの花は開花から満開までは美濃平野部で8日間ほど、飛騨地方では4日間とまさにパッと咲き、両地域とも1週間ほどで葉桜になります。しかし、この季節には「春の嵐」や「寒の戻り」に見舞われ、落花が早まり花を楽しむ期間が短くなることがあります。
それでは、こうした現象を起こすときの天気図を見てみましょう。
二つ玉低気圧がきました・・・せっかくのさくらの花が
真冬に日本付近に張り出していたシベリア大陸からの冷たい高気圧が、冬の終わりの頃には弱まります。今まで日本のはるか南を通過していた低気圧の通り道は北上し、3月から4月になると日本海を進み暖かい南風が吹くようになり、春本番を迎えます。
しかし、この時期にはまだ北には強い寒気が残っており、そのため日本付近を通過する低気圧は急激に発達し、突風、雷、短時間の強い雨が降り、「春の嵐」を伴うことがあります。低気圧が日本の東海上に抜けた後は、一時的に西高東低の冬型の気圧配置になり強い北風が吹き、気温が低下し「寒の戻り」が見られます。こうした天候は4月下旬頃まで発生します。
下の天気図は4月6日~7日にかけて、二つの低気圧が日本付近を急速に発達しながら北東に進み、7日21時には北海道の南に達し、日本列島に「春の嵐」をもたらしたときの天気図です。東シナ海の西と南に二つの低気圧(ともに994hPa)があり東北東に進んでいます。48時間後には北海道の南に達して一つになり972hPaに急速に発達しました。このように日本列島をはさむように日本海と日本の南を進む低気圧を「二つ玉低気圧」といいます。
西日本から北海道まで暴風警報や大雨警報が発令され、北海道では40m/sを越す暴風や、宮崎県や福島県では1時間雨量が100mm前後の豪雨を記録し、交通網の乱れを始め市民生活に大きな影響が出ました。
岐阜県内では岐阜市で最大瞬間風速19m/sを観測した程度でしたが、それでも各地の春祭りが中止や縮小されました。また、低気圧通過後には大陸からの寒気の流入により奥飛騨では積雪を観測、岐阜市でも8日の最低気温は3月上旬並みの7.3℃と前日より7.4℃も低くなりました。
さて来月は新緑のまぶしい5月です。立夏にちなんでさわやかな話題をお送りします。
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